東京高等裁判所 昭和33年(ネ)1201号 判決
そうして関口政太郎が昭和三十一年四月十日まで被控訴会社の代表取締役であつたこと及びその後任代表取締役の就任の登記がなされたのは同年十月二十日であることは当事者間に争なく、成立に争のない甲第五号証、乙第一号証によれば、昭和三十一年四月十日関口政太郎の退任と同時に他の被控訴会社代表取締役関口一光及びその他の取締役全員も退任し、被控訴会社には同日以後同年十月十五日まで代表取締役及び取締役を欠いていたことが明らかであるから、商法第二百六十一条、第二百五十八条の規定により、関口政太郎は新たに選任された代表取締役関口一光が就任した同年十月十五日までなお代表取締役としての権限を有していたものというべきである。原審における被控訴会社代表者関口一光尋問の結果及びその結果により真正に成立したものと認める乙第二、第三号証によれば、被控訴会社においては昭和三十一年四月十五日株主総会の決議により後任取締役として関口一光外二名が選任され同日取締役会の決議により関口一光が代表取締役に就任したもののように見えるけれども、これらの証拠は前掲甲第五号証、乙第一号証の記載に照したやすく採用し難いばかりでなく、仮にそのような事実があつたとしても、それは商法第百八十八条の規定により登記をなすべき事項であるところ、昭和三十一年十月二十日に至るまでその登記のなかつたことは右甲第五号証、乙第一号証により明らかであるから、この点につき控訴人の悪意の認められない本件に在つては、被控訴人は控訴人に対しては右登記以前に前代表取締役関口政太郎が退任により代表権を喪失した事実を対抗することができないこと商法第十二条の規定により明らかである。従つて関口政太郎が被控訴会社を代表して本訴各約束手形を振出したことはその権限内にあつたもの、少くとも被控訴人は控訴人に対し関口政太郎に代表権限のなかつたことを主張できないものということができる。
(川喜多 小沢 位野木)